芸大合格者の作品

目白まで出かけたついでに、すいどーばた美術学院によりました。
ここは、美術大学受験の予備校です。
特に東京芸大の油絵科に昔から多数の合格者を輩出する、予備校界の名門（？）です。
最近では、東京芸大の油絵科合格者のトップは、新宿美術学院ですから、トップの座からは転落してしまったのですが、それでも人気のある学校です。

私自身も３０数年前、高校の春夏の講習と、３年目の浪人時代を過ごした懐かしい学校でもあります。
（ちなみに高校卒業後の２年間は新宿美術学院で、楽しく学びました）

そこで芸大合格者の作品展なるものが催されておりましたので、覗いてみました。
彫刻科、デザイン科、日本画科は従来通り描写力を競わせる写実的な、いわゆる受験用の絵でした。
ところが、油絵科に限っては、個性的な表現を主体とした作品ばかりでした。

我々が受験生のころ、この学校の受付の上には、セザンヌの「赤いチョッキを着た少年」の複製画が鎮座しており、受験用の絵とはセザンヌのような絵でありました。また、新宿美術学院でも同様に、印象派風の写実的な絵が受験用の絵として主流でした。

予備校でそのように教えてた訳ではないのですが、現在世界的な作家として活動している川俣正氏などの諸先輩が芸大に入学するために描いた絵が、そのような傾向だったため、新宿美術学院ではそのような絵が主流でした。
これらは、それなりのテクニックと描写力を必要とするものです。
最も、セザンヌの絵画界における役割は本来違うものなのですが、高校生や受験生にとっては、現実には見えない紫色の陰や、赤黄緑などを多用して表現する写実的な絵は、いかにも絵画を勉強しているようで憧れたものでした。

しかし、その頃からすでに芸大は個性的な作品を求めていたようで、若干合格作品の傾向も変わってきました。が、今日改めてみたそれらの作品は、その後３０年間、受験界は全く変わってないということを実感させるものでした。

この一見個性的な作品は、沢山の絵を見たり、芸術を勉強した受験生にとっては、写実的な絵よりも作品としての完成度は高いと思います。
しかし、これらの作品はやはり受験用の絵なのです。
合格者たちの作品を見る限りにおいては、日展や二科展に代表される公募団体の作品よりは、若干レベルは高いかもしれません。
しかし、過去の美術界の様々な絵画のスタイルを引用し、それなりの完成度を持って一見個性的に仕上げることが受験対策だとすれば、これはこれで３０数年前の印象派風写実絵画と基本的な部分では変わりないと思われます。

そもそも、高校を卒業したたばかりの少年少女に、個性的な表現を求めることが無理な注文ですし、大学側も少しでも才能のありそうな人材を選別しなくてはならないという事情がありますので致し方ないことと思われますが。
よってこれらの作品は、一般科目の学力試験と同様に、少し絵画を学んだ者の目を持ってすれば、善し悪しの判断はつく作品です。
そういう訳ですから、現代アート界で生きていこうとする者にとっては、東京芸大は何も教えてくれないでしょうし、そもそも教授たちが現代アート界で食ってる訳ではないのですから教えられるはずがありません。

ただ、このことは実は、とても重要な問題なのです。
日本を代表する東京芸大がこのような調子ですから、日本の若者が世界のアート界に出て行くにはどうしたらいいか？
何十年もの課題です。

この問題に真剣に取り組んでいるのは、現在のところ村上隆のみと思われます。
芸大に期待できないのであれば、自分の工房から。
もしくは入学前の受験生をなんとかせねばと躍起になってるようです。


すいどーばた美術学院の合格者作品はここで↓
http://www.suidobata.ac.jp/pc/success/08/gallery.html





新宿美術学院の合格者作品はここで↓
http://www.art-shinbi.com/g-oil/day.html

ほかに、千葉の予備校出身者の作品なども目につきましたので掲載しておきます。
それぞれの学校で特長ありますね。

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