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ピーター・ドイグ(1959年~ スコットランド出身) [Artist]

ピーター・ドイグ(1959年~ スコットランド出身)

新しい具象(ニュー・フィギュラティブ・ペインティング)の画家。
1958年にエジンバラに生まれる。幼少の頃にトリニダード・トバゴ共和国、カナダに移り住んだ後、1979年から90年までにロンドンの数校の美術学校でアートを学ぶ。1994年にターナー賞にノミネートされるなど、イギリスのアートシーンを担っています。

1970年代アート界では、世界的に展開された【コンセプチャル・アート(観念芸術)】によって、アートは難解なものになり停滞の時期を迎えていました。

1980年代になると、このモダニズムの閉塞的状況を打開しようとするムーブメントが世界的規模で同時期に起こります。

「絵画らしい絵画」を表現したい画家たちとそれを観たい大衆との欲求が一緒になったのでしょうか、一大ムーブメントになり、アート界に活気がもたらされました。
絵画に再び「内容」や「意味」が復活し、何を描くかということが大事なテーマになります。



ドイツでは「新表現主義」 アメリカでは「ニュー・ペインティング(バッド・ペインティング)」 イタリアでは「トランス・アヴァンギャルド」と呼ばれました。

この時代のニュー・ペインティングは、巨大なキャンヴァスに奔放で激しく力強い筆触・自由で大胆な色遣いで描かれているのが特徴です。
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アンセルム・キーファー



アンセルム・キーファーやジュリアン・シュナーベルの作品を見て分かるように、マティエール(画肌)やテクスチャ(質感)に大きな特徴があり、それがまた鑑賞者に対する訴求力を高めています。
そして、1990年代になると、「新しい具象(ニュー・フィギュラティブ・ペインティング)」のアーティストたちが登場してきます。


「新しい具象」のモティーフは、実際に起こりうる(経験・体験)ことや、すでに経験したことです。身の回りの日常を描いています。しかし日常を日常のまま描くのではなく、メディアの写真・広告写真・映画のワンシーン・絵葉書・ポスター・他の美術品などを利用して、具象でもあり抽象でもあるようなあいまいな世界を描いています。


「新しい具象」は私たちにとっても、『何処かで見たことがある』『行ったことがある』という思いが湧いて作品に入り込んでいくことができるような作品が多くみうけられます。


この「新しい具象」が発生する背景として、80年代の「ニュー・ペインティング」と平行して、「シュミレーショニズム」と呼ばれる美術運動がありますのでご説明します。



シミュレーショニズムは、1980年代のニューヨークを中心に広まった美術運動で、近代芸術の唯一性(アウラ)に反対し、大衆芸術のイメージを、カットアップ、サンプリング、リミックスといった手法を用いてアプロプリエーション(appropriation、盗用)することを特徴とします。



シミュレーション・アート(simulation art)、アプロプリエーション・アート(appropriation art)とも呼ばれる。



その背景には、ジャン・ボードリヤールが『シミュラークルとシミュレーション』で指摘したように、オリジナルとコピーの区別が消失し、コピーが大量に消費される現代社会の様相があり、簡単にコピーができる虚しさや寂しさをある意味で表現していますが、オリジナリティーという芸術の基本的な問題に対しての疑問もていきしております。



映画の一シーンのような情景を演じたセルフ・ポートレイトを撮影したシンディ・シャーマン、ウォーカー・エバンスの写真を複写して自らの作品としたシェリー・レヴィーン(Sherrie Levine)、ジェフ・クーンズなどが代表的な芸術家とされています。



ここのアーティストに関しては改めて、記事を書くつもりでおりますのでお待ちください。
日本においては、美術評論家の椹木野衣が1991年に著した『シミュレーショニズム ハウス・ミュージックと盗用芸術』における論説が、芸術家などに大きな影響を与える一冊であり、管理人も推薦する図書であります。


この「シュミレーショニズム」を経ての「新しい具象」はきわめて個人的なテーマが多く、ピーター・ドイグのように、自分の経験や記憶から得たインスピレーションに誘発され、自身が撮り溜めた写真や広告写真や絵葉書などを利用して心象風景を描いています。そして次のようにも語っています。



「僕は自分の絵をリアリスティックなものなどとは全然思っていない。僕の絵は、目の前にあるものからというより、むしろ自分の頭の中から生まれたものだと思っている。」------「ART NOW」(タッセン社)より



写真(映像)には、瞬間的に現実を捉え固定(記録)する面白さがあります。
19世紀に発明され、再現性という側面で絵画より一歩先に出た写真は発展を遂げ、1990年代には映像や写真がアートとして認知されます。
今では、絵画並みの価格の写真も多数存在します。


「新しい具象」の画家たちは、写真の視覚的な面白さを利用し、それを再び手わざで再現しました。
さらに物質的な(絵具)面白さも加えて、写真のような絵画、現実のようで現実ではない「物語空間」、具象の中に抽象的な要素を取り入れた新しい絵画にアプローチし、表現手段としての絵画のヴァリエーションを広げています。
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ピーター・ドイグ
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エリック・フィシェル [Artist]

1948年ニューヨーク生まれのこの画家を知ってる人はそれほど多くそれほどはないと思う。

でも、アメリカではエドワード・ホッパーと並んでかなりの有名人のはず。

1975年初個展を開いたこの画家は、ニューペインティングの作家として日本でも紹介されました。

エドワード・ホッパー的な雰囲気のその絵は何故かとても懐かしい感じがして、とても好きです。


でも、裸の子供や家族が遊んでる風景が多く、「フロイト的」だと言われる。

ホッパーのポルノ版のような絵と思って貰えればいい。



今、どうしてるのか分からないが、1987年マンハッタンのビルのパブリックスペースで、この巨大な絵を初めて見たときは衝撃でした。

何とも言い難い不思議な画だ。

だれも、まともには解説できないだろう。


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1983年作のこの絵画は、274 X 198センチメートルもある巨大な絵ですよ。想像できます?


あるサイトの言葉をそのまま引用します。

新表現主義の一人としてかぞえられていますが、どちらかといえばアメリカン・シーンのエドワード・ホッパーと比較される存在。
そのペインタリーな画面は、いわゆる日本人好みのはずなのですが、今一つ知られていないのは、所蔵品が少ないせい? 
それとも日常生活や性のタブー視されがちな分野での題材のせいでしょうか?
私たちの意識や認識の枠を超えていこうとするアーティストなのですが…


今手元にある画集と、作家本人にインタビューした本をもう一度じっくり読んでいようと思う。

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Exit Through The Gift Shop バンクシー [Artist]

「Exit Through The Gift Shop」というタイトルの映画を観た。
これは、あのストリートアートのカリスマ、バンクシーの監督作品なんです。



そのバンクシーが今ほどアート界で知られていない時期から、制作風景の撮影を許可されたあるフランス人のあるカメラオタクの物語です。

彼の名はMBW (ミスター・ブレインウォッシュ)。フランス人の彼は一時もカメラ(ビデオ)を手放せない病気のような性格で、本業は古着屋さんをやっていて商売は順調だったようです。
はじめは家族や友人など身の回りの生活を撮影していたのが、ストリートアートと出会って、そのスリルと興奮にすっかりのめり込んでいったようで、最終的にはバンクシーに出会い、唯一バンクシーの制作現場を撮影を許されるようになったんです。
ですから、ストリート・アーティストの作品や作業工程などを撮影していくなかで、すべてを知ってるわけですね。



非合法のストリート・アートはその性質ゆえ作品は消されてしまう運命にあるので、ある時、バンクシーは「じゃあ映像で残しておくのも悪くないかも」と思い、このフランス人に撮りためたビデオを編集して映画にして欲しいと頼みますんだところ、出来上がった映画は、カメラオタクのつぎはぎショットが延々90分。(90分の映像の短縮版がどうDVDに収められています)
さすがのバンクシーもこの映画には呆れ、「映像はもういいから君もアートをやったら?」と勧めたところとんでもない方向に事態が進展して・・・。





バンクシーをはじめ、ストリートアーティストたちには、必ずがそれぞれが持つ信念や伝えたいメッセージが存在しています。アートは目的ではなく手段に過ぎないからこそ、ストリート・アートという非合法的なアートが、社会に認められ、アートマーケットでも売買されているわけなんです。



ところが、このフランス人MBW (ミスター・ブレインウォッシュ)は、そんなメッセージなど無い。ただバンクシーに薦められて、その気になって、力技でショーを開催して成功してしまうんです。
作品は今ままで見てきたストリート。アーティストたちのパクリ。当然ですが作品制作はたくさんのスタッフを雇って作らせ、バンクシーと近しい自分の立場を利用して宣伝し、メディアまでその気にさせて一気にのし上がってしまう。
その過程が見事に映画の中で表現されており、見ていて爽快です。





結局バンクシーが伝えたかったことは、こんな中身の薄っぺらな作品でもメディアが取り上げればアートとして成立してしまうアート界に継承を鳴らしたかったのか?それともそこも含めてアートなのかは判断できませんが、アートとはなんぞや?と考えさせられる作品になっています。



この映画に度々ゲストとして登場するダミアン・ハーストも含めバンクシーもアートを通して伝えたいメッセージをしっかり持っているだけに、MBW (ミスター・ブレインウォッシュ)は多分理解の外に居るのでしょうが、いずれ時間が彼の真価を評価してくれると思います。



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Mr. Brainwash(MBW)ミスターブレインウォッシュ



映画監督から転身した異色のフランス人アーティストで現在はLAを拠点に活動中。
アンディ・ウォーホルを筆頭に、マルセル・デュシャン、ジャクソン・ポロック、ロバート・インディアナの巨匠から、バンクシー、ダミアン・ハースト、シェパード・フェアリー、レニー・ギャグノンら現在活躍中のアーティストまで、彼らの作品の良いところを上手く取り込んだポップな作風にファンが急増。2008年秋頃から落ち着きを見せ始めたグラフィティアート・シーンの中でも出す作品すべてが即 “SOLD OUT” になる数少ないアーティストです。
日本にはMBWの情報がほとんど入ってきていないため、グラフィティアートのコアなファンか、海外のアート事情に詳しい人でないと欧米のグラフィティアート・シーンでのMBWの今の盛り上がりはピンとこないでしょう。しかし、BANKSY登場時以来、久しぶりの凄いことになっています。
BANKSY、Shepard Fairey本人からもリスペクトされているアーティストです。


タグ:バンクシー
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